ずっとあなたが好きでした。
あなたの事を本当に本当に心から愛していました。
いろんな所に行ったよね。
いろんな物を食べたよね。
いろんな物を見つめたよね。
いろんな思い出ばかりだね。
観覧車 名画座 浮かんだ亀。
カレーライス 檸檬リキュール 流れる景色。
あなたが好きだったピンクの小さい花。
あの時はあなたと一緒になれなかったけど
今度生まれ変わったら一緒になろう。
そう約束したのは100年前。
そう、僕たちは100年前に死んでしまったのです。
火葬場の煙突から流れた僕たちの煙は
原子となり、青く澄み切った空に雲を作りました。
そして雨が降り、僕たちの原子はまたこの地上に舞い落ちました。
輪廻転生、そうして生命は繰り返されるのです。
だから必ずまた出会えるのです。
またあなたに出会うまで僕はそれを繰り返すのです。
僕はあれから、牛として生まれ変わりました。
遠い異国の果ての牧場で生きていました。
残念ながら人間ではなかったけれど
それでもあなたに会えると信じて生きていました。
しかし牛に生まれて7年目の冬に
僕は人間に食べられて死んでしまいました。
そして骨から地面にこぼれた原子により
僕はアブラゼミとして生まれ変わりました。
それは僕にとって初めての羽でした。
これであなたの元まで飛んで行けると喜びました。
しかしアブラゼミに生まれて7日目の朝に
僕は子供に捕まって標本にされてしまいました。
でも僕は大丈夫です。
抜け殻として残った原子が、また僕を転生させてくれるのですから。
それを何度繰り返した事でしょう。
生きたり死んだり、死んだり生きたり。
いつもあなたの事ばかり思い出してしまいます。
でもあの日があるから生きていけるのです。
あなたに会いたい。いつかまた会いたい。
だからあなたに会うまで、僕は生きたり死んだり繰り返すのです。
それを何度繰り返したでしょうか。
ついにあなたを見つけたのです。
あなたは人間として生まれ変わり
あの頃と変わらない笑顔でとても可愛く。
あなたが大好きだったピンクの小さな花。
すっかり咲き乱れる季節になりました。
僕の事を覚えてくれているかな。
あの約束は覚えているかな。
抱きしめてキスをしてあげられないけど
この日があるから生きてこれたのです。

だからもう少し待っててね。
あの頃の僕として生まれ変わる日まで。
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