
夢の中では婆さんとの楽しかった思い出が。
あれは確か16の春に知り合った美しき女学生。赤い煉瓦の小さな写真館の前で、当時学生だった爺さんが思わず一目惚れ。募る思いを女学生に打ち明けようとするが、恥ずかしさから俯きながら声にならない声で伝える爺さん。そして白い顔を真っ赤に染めて下を向いたまま頷く女学生。そして爺さんは戦場へ召集された。
「生きて帰って来たら結婚しよう」
最後の夜に、暗い街頭の下で手を握りながら交わした約束。女学生から止め処なく溢れる涙。その握り合った手の中には、女学生が夜鍋して縫ってきた小さなお守り。爺さんはそれを胸ポケットに入れて翌日旅立つ。
女学生は祈った。遠い空を見つめ、毎日毎日、ただひたすら祈った。
やがて終戦を迎え、この国は復興が始まった。敗戦のショックにより、人々から笑顔が消えた暗い悲しみの時代。明るい希望など、この頃はとても想像が出来なかった。女学生も家族と生計を保つ為に、朝から晩まで畑仕事に精を出していた。その時、光が現れた。
「約束通り戻って来ました」
その声はとても温かく、そしてとても優しくて。女学生はその声の持ち主がすぐに分かった。しかし女学生は畑仕事で汚れた服や顔を気にして、その声が聞こえる方向に背を向けた。均した土を踏みしめる音が次第に近付いて来る。そしてその音が真後ろで止まると、聞こえてくる音が心臓の鼓動音に変わった。
「結婚しよう」
女学生が待ち望んでいた言葉。それを唯一の希望として生きてきた。あの日と同じ涙が頬を伝う。女学生は思わず振り返り、その声の持ち主に抱きついた。そしてこう答えた。
「ワンワンワワン(待っていたわ)」
「ワンワンワンキャイン(帰って来れたのはこのお守りのおかげだよ)」
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「あらまあ、二人ともお腹出したまんま寝ちゃって…」
婆さんはそっと毛布を掛けた。
ランキングが125位(笑) 我ながらザコ(笑)
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